ロンドンの旅 その7(パーキンソン病)

先日無事にロンドンより帰国しました。
やはり2年ぶりのロンドンはお気に入りのお店が閉店、ビルが一棟立て直し、などいろんなところで月日の流れを実感することになりました。
今回の旅の目的はアレクサンダーテクニークの勉強でしたが、せっかくなので今回のロンドン旅行全般を気の向くままに書いていこうかと思います。

=====前回の続き=====

今回の滞在中に突然ではありましたが、パーキンソン病の生徒さんにアレクサンダーテクニークのワークを行うという機会をいただきました。

アレクサンダーテクニークとパーキンソン病に関しては、現在、あるグループを中心に大々的にアレクサンダーテクニークとパーキンソン病に関するサーベイ(アンケート調査)が実施されたばかりです。

こちらの動画はとあるパーキンソン病患者さんのアレクサンダーテクニーク体験インタビューです。この動画から彼女がアレクサンダーテクニークに対してとてもポジティブで積極的に捉えていらっしゃることがよくわかります。
この方はパーキンソン病を患って約15年、アレクサンダーテクニークは9年ほど続けていらっしゃるそうです。
彼女自身、病気特有の震えや足が思うように前に出ない症状があるそうですが、アレクサンダーテクニークのレッスンを受ける中で、頭を上に方向づけし、歩き出す中で後ろに残る足に意識を持っていきながら、歩き続ける中でも自分に指示を出し続けることで歩いているうちに驚くほど滑らかなウォーキングになっていくことが動画の中で紹介されています。

 

しかしながら今回私がいただいたパーキンソン病患者さんとのワークの機会は、やはり動画の世界のようには行きませんでした。あまりに当たり前のことですが、動画の患者さんは彼女と彼女のアレクサンダーテクニークの先生との長い信頼関係があった上での経験の積み重ね。そんな人間関係、信頼関係の大切さを改めて感じ学び直していく必要を痛感しました。

 

今回私がお会いしたパーキンソン病を患っていらっしゃる方はすでに震えを抑える手術を行っていたそうで、お会いした時には全く普通の方と変わらぬ印象でした。しかしいざ実際にチェアワークを初めてから最初に感じたことは、彼の頑な反応でした。会話をしていても特にそこまで強く彼が私を拒絶している様子はないのですが、実際は腕を私に預けることも難しい状態でした。私も最初はかなり混乱と困惑の中にいましたが、時間をかけて彼と向き合うことで、彼の混乱が少しわかるような気がしました。そののちテーブルワークへ移行すると彼自身がどう感じたの方はわかりませんが、私にはとても安心した感じが伝わってきたように思いました。

 

ここからはあくまで彼の身体の反応から感じた私の理解ですが、たとえ手術で震えを抑えていたとしても、傍目には病気とはわからない程度の震えの状態であったとしても、彼自身の中では完治ではなく症状を抑えているだけなのでしょう。その為かやはり根本的に病気に対する怖れや手足を動かす行為そのものに対して抱えている心理的不安など、心と身体の反応は相当強いものがあると感じました。だからこそ教師と生徒として、生徒の病気と生徒自身への信頼など信頼関係を築く過程に時間をかける事が大切なのかと考えます。

今回はそんな中でもほぼ面識のない私のワークを次第に受け入れて1レッスン分の時間を共有してくださった彼の優しさと勇気に感服しました。元々私の病気に対する理解が全く足りていない状態で、今回彼とアレクサンダーテクニークのワークをする機会を頂けたことをただ感謝する気持ちでいっぱいになりました。

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