ウィリアム・コナブル氏とアレクサンダーテクニーク

先日、二日にわたってビルさんこと、ウィリアム・コナブル氏のワークショップと個人レッスンを受講してきました。

FMアレクサンダーが声が出せないという自分の身体のトラブルに向き合い、それを他の人へレッスンを行うようになってから早100年。世界に広がっていく中で数多くの新しい教師が各々の理解を発展させていく過程でアレクサンダーテクニークから派生する新しいボディワークなども登場してきました。

ボディマッピングもその一つ。
ボディマッピングを敢えて一言で言い表すならば、「脳の中にある”身体”の地図」をより正確に修正していくという作業ということでしょうか。

私たちの脳は無意識にいろんな情報を処理しています。
例えば冷蔵庫を開けて牛乳パックを取り出す。これだけ?と思うかもしれませんがこれが実はすごいことなのです。
牛乳パックは紙でできているので、牛乳があとどのくらい残っているか?は目で確認することが出来ません。でも冷蔵庫から取り出すときに大抵問題なく取り出すことが出来ていませんか?
冷蔵庫から問題なく牛乳パックを取り出す、ここには過去の経験や指先で触れたとき、昨日までの記憶などで一瞬のうちにこの牛乳パックを取り出すための適切な力加減をコントロールしているのです。
ですので、たまに家族の誰かがこっそり牛乳を飲んでしまったり、ものすごく急いで取り出そうとしたとき、想定外に牛乳パックが軽くて驚くということが起きたりするのです。

ボディマッピングにおいては、脳が間違って作り上げてしまった身体の地図を修正していく事でよりよい身体の使い方を目指します。
例えば子供の頃に何らかの理由で松葉づえ、車いす生活を送っていた人は、大人になって歩けるようになっていたとしても少し足を引きずるような仕草が残っていたりするかもしれません。これは膝や足首が身体機能としてはすでに回復して曲げ伸ばしに支障がないとしても、脳の中の身体の地図上ではここが関節で曲げ伸ばしできるという情報が抜け落ちてしまっている可能性がある。
なので頭の地図からここに関節があることを学習しなおそうという考えだそうです。

ボディマッピングはアレクサンダーテクニークから派生したボディワークですが、よりピンポイントに問題点にアプローチできるため、その瞬間はとても「分かりやすい」ものだと思います。そのためボディマッピングとして単独で学ばれる方も増えていることも確かです。

今回はボディマッピングの考案者、ウィリアム・コナブル氏のワークショップに参加することでロンドンではあまり体系だって学ぶことのなかったボディマッピングを勉強出来ることを期待して参加しましたが、その期待は異なる方向に裏切られました。

◆クラシックなアレクサンダーテクニークへの回帰◆

ウィリアム・コナブル氏のワークショップは、もちろんボディマッピングとしてのエッセンスがあふれておりましたが、ワークショップの流れとしてはむしろかなり古典的なアレクサンダーテクニークのプロシージャ―(ハンズオン、モンキー、ハンズオン バック オブ ザ チェア)が中心でした。
ウィリアム・コナブル氏いわく、エネルギーワークなど新しいことを学んでいく中で、いわゆるクラシックなアレクサンダーテクニークに戻ってきたとの事。

私はロンドンでいわゆるクラシックスタイルのアレクサンダーテクニークを学んできました。
クラシックスタイルのアレクサンダーテクニークはとにかく時間がかかる!
個人個人に向き合い、教科書的に刷り込むのではなく、個人が自ら自分自身を理解していくことを手助けする、その過程は試行錯誤の連続で要する時間も個人差がとても大きい。
お教室として考えた場合には、一斉にある程度型通りに教えていけるボディマッピングなどのほうが効率もよく、生徒さんも「勉強した~!」という短期的な満足度が高い。
それでもやはり最後は個人個人と向き合う必要があること、そのためにはクラシックスタイルのアレクサンダーテクニークでいいんだ、と再確認できました。

◆個人と向き合うボディマッピング◆

ウィリアム・コナブル氏の個人レッスンも受けました。
この日はクラリネット演奏というアクティビティを見ていただきました。
自分の足で立つ、という事。
とてもシンプルですが、パワフルにメッセージを伝えてきてくださいました。
その時、ボディマッピングもやはり個人個人に向き合うべきもの、教科書的に教え込むものではないと感じました。

今後も試行錯誤を重ねつつ、個人に向き合うワークを研究していこうと改めて考えることが出来ました。

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